ある人の思い出
2013-02-21


ある人の思い出

 

今からざっと20年以上前、あるアマチュアオーケストラにいた。定期演奏会で、シベリウスのバイオリン協奏曲を演奏することになり、ある若手の学生の女性バイオリニストを呼んで、演奏会を行った。そのバイオリニストは、ほっそりした体からは思いもかけない鮮烈な音を奏でていた。まだ学生ながら堂々としたシベリウスだった。私は練習時に代奏はしたかもしれないが、本番ではシベリウスの時にはステージに乗ってはいない。

本番後しばらく経って、郊外を走る高速バスに乗る際に列に並んでいたら、列が動き出してちょうど列が交差したところで、そのバイオリニストと出会った。彼女の方から、「オーケストラの人ですよね」と声を掛けてくれた。実は、私はその時まで、彼女と気づかなかった。彼女が覚えていてくれたのが大変うれしかったの覚えている。それから10年以上経ってからのことである、彼女が世界最高峰のベルリンフィルの首席ヴィオラ奏者になったのを知ったのは。彼女こそが清水直子さんだった。


[音楽]

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